札幌家庭裁判所 昭和33年(家イ)292号 審判 1958年8月07日
申立人 浦川ミヨ(仮名)
相手方 福井毅(仮名)
主文
当事者間の昭和二六年○月○日付○○市長宛の離婚届によつてなされた協議離婚は無効であることを確認する。
理由
当事者双方は主文同旨の審判を求め、その原因たる当事者間に争いのない事実として次のように述べた。当事者は大正一〇年○月○日正式に婚姻したが昭和二〇年六月頃から夫婦の協力扶助の関係が漸次悪化して行き昭和二六年三月頃遂いに申立人は当事者間の長女晶子及び四男郁夫を伴つて札幌市○○条西○丁目○番地○○アパートに引越して生活することになつた。ところが仲に立つ人があつて、同年五月○日話合いがついて申立人は相手方の許に戻ることになつたのであるが、突如として相手方は何等申立人の承諾を得ることなくほしいままに当事者間の協議離婚届書を作成し、同年○月○日これを○○市長に提出し、同日受理され、戸籍簿にその旨記載されるに至つた。然し右離婚届には申立人が何等関知しないものであるから右協議離婚は無効である。と。
そこで当事者間の札幌地方裁判所昭和二六年(タ)第一三号協議離婚無効確認・離婚・財産分与請求訴訟事件判決書及び同訴訟手続における証人和田トヨ、同木下二郎の各尋問調書の記載を調査綜合してみると全く申立人が関知しないで本件離婚届が提出され且つ受理されたものであることが認められる。
してみるとこの届出によつてなされた協議離婚は当事者間にその合意がないから無効と謂わなければならない。よつて家事審判法第二三条により主文のとおり審判する。
(家事審判官 海野賢三郎)